建設業における労働災害防止対策の徹底に関する緊急通達について
都内の建設現場での死亡労働災害が、年明け以降、憂慮すべき水準で増えています。東京労働局によると、令和7年に入ってからの死亡者数は9件に達し、前年同期の3件と比べて3倍に急増しました。この事態を重く受け止めた東京労働局は、令和7年7月25日、川又修司労働基準部長名で建設業界に対し、労働災害防止対策の徹底を求める異例の緊急通達を出しました。
令和6年の建設業の死亡者数は11人で、統計開始以来の過去最少を記録していました。墜落・転落による死亡災害も1件にまで大幅に減り、安全対策の進展が見られていました。しかし令和7年に入り状況は一変し、発生した9件のうち半数以上の5件が高所からの墜落・転落によるものでした。これらの事故現場では、手すりの設置や墜落制止用器具の使用といった労働安全衛生法に定められた基本的な安全措置が講じられていなかった事例が確認されています。
労働局は、相次ぐ災害の背景に個々の現場での基本的な安全対策の不備や、作業計画段階での安全性の検討不足があると分析しています。さらに、現場全体の安全意識や安全管理能力の低下を強く懸念しています。
今回の緊急通達では、こうした状況を踏まえ、建設業界全体に対し改めて労働災害防止の徹底を求めています。特に、東京労働局が推進する「4K」(決意表明、管理活性化、高所対策、教育強化)の確実な実施を要請しています。現場所長が先頭に立って災害ゼロへの決意を示すこと、リスクアセスメントの実施や下請け事業者への指導の徹底、高所作業の安全点検強化、新規入場者教育などの安全衛生教育の徹底が求められています。過去最少からの急増という厳しい現実を前に、建設業界には安全管理体制の再点検と確実な実行が強く求められています。